「クリストファー・アレクサンダーの思考の軌跡 - デザイン行為の意味を問う」を読んだ感想をまとめる
形は機能に従う、機能は形に従うのではない
「形は機能に従う」
これがこの本の中で最も重要だった言葉だと感じました。
様々なニーズを満たすものの形は、そのニーズを満たすような機能が先だって定められ、その機能を満たす形がおのずと決まる。ということを言っている。
デザイナーと自然科学者の対比
本書では扇風機の説明の仕方を例にその違いを対比していた。
デザイナー観点での扇風機の説明
扇風機はその前にいる人を涼しくするという機能を持っている
クリストファー・アレクサンダーの思考の軌跡 - デザイン行為の意味を問う | 長坂 一郎 (著)
自然科学者観点での扇風機の説明
扇風機は羽を回転させて(最近は翅のないものもあるが)、一定の風速の空気の流れを発生させるという機能を持っている
クリストファー・アレクサンダーの思考の軌跡 - デザイン行為の意味を問う | 長坂 一郎 (著)
この2つの「機能」の説明は全く異なり、デザイナーの観点からは扇風機が作られた目的が説明されている。
自然科学者の観点からでは「機能は形に従う」説明になっている。機能に先だって形が存在していることになる。
例えば、「キリンの高いところにある葉を食べる(機能)から首が長い(形)のだ」のようになる。 (キリンは高いところにしか葉がないから首が長くなったのではなかっただろうか。)
この「機能」の捉え方がデザインにとって最も根底にあることだと思われる。
デザイナーにとっては、形に先だって機能があるという考え方によって再現あるよいデザインをすることができるのではないかとこの本では言われている。
デザイナーの仕事
デザイナーの仕事は、この「機能」が目的としている「ニーズ」を定義し、分析することにある。(と読み取れた。)
ここでの「ニーズ」は~を求めている。ではなく、~をしようとしている。などの傾向のことを言う。
本書では「ニーズ」=「人々がしようとすること」と概念を置き換えている。
デザイナーはこの「人々がしようとすること」が何らかの理由で実行できないとき、それを様々なモノの粒度や関係性を変えることで、ユーザが実行できる状況を作り出すことが仕事になる。
この目指す状況の違いに特定の人、デザイナーならではの個性が現れるのだと思われる。
オーダーメイドっていいもんなんだな、
この本を読んでオーダーメイドというは、このプロセスをひとり占めできるのだからそれは贅沢なものなのだと気づいた。
他の誰のためのものでもなく、自分だけのためにニーズを分析して、形を作る。
このプロセスを経て作られたものがいいものでない訳がない。